ホーム > 文化からの復興

文化からの復興

市民と震災といわきアリオス

文化からの復興

福島県いわき芸術文化交流館 アリオスの復興への取り組みと、公共文化施設が持つ本来の役割を考える

著者 いわきアリオス 編著
ニッセイ基礎研究所 編著
ジャンル 文化とまちづくり叢書
出版年月日 2012/07/30
ISBN 9784880652962
判型・ページ数 A5並製・274ページ
定価 1,980円(本体1,800円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

公共文化施設とアートが取り組む、震災からの復興。「いわき芸術文化交流館 アリオス」の1年

東日本大震災から1年、復興は緒に就いたばかりだ。住宅や公共施設、都市インフラなど、被災地の生活の再建、産業や経済の復興は一刻を争う。そんな中、福島第一原発から40kmに立地するアートセンターが、市民と一体になって文化による復興にチャレンジしている。その1年をドキュメントにまとめ、震災後の日本の未来を文化から展望し、公共文化施設が持つ本来の役割を考える。

【編著】
いわきアリオス
2008年に開館した公共文化施設。気軽に集い、ふれあい、楽しめるコミュニティ空間、地域の伝統文化から先駆的な舞台芸術まで触れる事ができる、地域における公共劇場の新スタンダードをコンセプトに地元NPOとの協働などユニークな取り組みを続ける。

ニッセイ基礎研究所
国内外の経済金融問題をはじめ、年金・介護等の社会保障問題や住宅・都市問題を中心に、中立公正な立場から基礎的、かつ問題解決型の調査・研究を実施するシンクタンク。
*プロフィールは本書刊行時の物です。

このページのトップへ

目次

震災の記録と記憶をとどめ、文化からの未来を語るために


第1部 いわきアリオスと震災復興の1年
1“避難所いわきアリオス”開設まで
 200万人目のメモリアル・デーの予定が……/「避難所いわきアリオス」開設へ
2 市民といわきアリオスの3年間
 様々な「顔」を持つまち「いわき」/いわきアリオス完成までのあゆみ/「いわき方式」で、かつてない劇場運営を模索/「文化の殿堂」でなく「屋根のある公園」として
3 危機的状況が続く日々
 いわき市の被害状況/「避難所いわきアリオス」を目指す避難者たち/市民生活を支えたラジオ/「通常開館」しているものと思い来館する人も/福島第一原発が水素爆発/安定ヨウ素剤の配布場所に/「アート」には本当に「力」があるのか?/ガソリンで、まちが息を吹き返す/ある「差し入れ」/通常業務は麻痺したまま、年度末を迎える
4 「聞くこと」「話すこと」からの再スタート
 市街地に戻ってきた「活気」/凍結した新年度の事業予算/スタッフの考え方の違いが浮き彫りに/まず「リサーチ」だ/外遊びができず、欲求不満やストレスを抱える子どもたち/震度6弱の最大余震が襲う/アリオスに待っていた、もう一つの運命「市役所分庁舎」/避難所終息に向けたスケジュールを探る
5 「避難所」終息と「再オープン」への道のり
 業務再開の準備を急ぐ/払戻し業務の開始/DM会員からの反応/主催事業のラインアップの決定/全館再オープンに向けたスケジュールの調整
6 「おでかけアリオス」の1年
 ホールが使えなくても、「おでかけアリオス」がある/高校の演劇実習室で「おでかけアリオス」再開/小中学校への「おでかけ」も始動/客観的な情報を集め、プログラムを考える/2学期から戻った「日常」/感想に現れた変化/大規模校は「おでかけアリオス」で学校間交流を図った/やはり舞台芸術は子どもに大きなインパクトを与える/地域コミュニティで「おでかけアリオス」が果たした役割/老人ホームでの落語会/あせることはない。丁寧にプログラムをつくっていけばいい
7 いわきアリオス再オープンへの助走
 広報紙アリオスペーパーを5カ月ぶりに発行/アリオス節電プロジェクトが発足/「あそび場アリオス」という新しい顔
8 「安全意識」というDNAを明日へ
 練習系施設の再オープン/コンサートが帰ってきた/アリオスの「安全意識」を見つめなおす/超党派のスタッフで100時間かけ「防災訓練」の準備/「防災マニュアル」の改訂/スタッフ全員が未経験の「防災訓練」に挑戦

9 全館再オープン、そして……
 ピアノ“再開”ミニ・コンサート/市民が「アーティスト」に変身するコンサートで、再オープン前の総仕上げ/大ホール再オープン当日、中学生からの「プレゼント」/全館再オープン、大物アーティストたちの応援が続いた/全国から来館したお客さまからの励ましの声/再オープン後のホール稼働率

10 明日へ……
 「いわきでつくるシェイクスピア」が帰ってきた/「復興」に向けて、いわきアリオスができること

【組詩】「アリオスに寄せて」 谷川俊太郎
 いまここ/舞台に 舞台から/ハコのうた/場


第2部 市民とアリオス 対話と実践から生まれたもの
1 公共文化施設のマーケティング?
 普通じゃない、を当たり前に/マーケティンググループの仕事を考えるにあたって/つながるロビーとまちなか
2 「アリオス・プランツ!」と「かえっこバザール」
 藤浩志さんといわきアリオス/OSという考え方/施設の大胆なイメージチェンジ〜かえっこバザールの開催
3 アリオス・プランツ!をめぐる小さな編年史
 プロジェクト型マーケティングという考え方/対話と実験そしてまた対話/インディアンがやってきた/ピンチはチャンス。アリオス・プランツ!フェスの開催/混沌とした「何でもフェスティバル」/2年目の試み。KOSUGE1-16登場/「持ちつ持たれつ」の関係/「コロコロ集会」/映画祭をやりたいと男がやってきた/「いわきぼうけん映画祭」への道/市民協働のフェスティバルは「訓練」だ
4 プランツ!を取り巻く文化の生態系 
 混沌から生まれた新たな動き/アリオス・パークフェス/インディアン・ヴィレッジ・キャンプ/三凾座リバースプロジェクト/Wunder ground(ワンダーグラウンド)/県内各地での「かえっこバザール」の展開/「いわきに住み、モヤモヤしている」以外に共通点がない/アリオスに対する第一印象は必ずしもよくなかった/異なる価値観との出合いや共感/「プランツ!」とは何だったのか?
5 プランツ!メンバーそれぞれの震災
 復旧活動に取り組み始めたプランツ!のメンバー/震災による個人や人間関係の変化/震災後に縮まった市民とアリオスの距離/不安と衝動、回り始めた歯車/「いわき自然エネルギープロジェクト」と「こどもプロジェクト」の始動/新たな出会いを「MUSUBU」ひと
6 レポート「アートおどろく いわき復興モヤモヤ会議」
 「アートの視点」/「こんなことイイネ! できたらイイネ!」/アートを切り口として現実と向き合う/「気づいてしまった人の責任」/結びにはインディアン兄貴を「召喚」した/プランツ!ふたたび

7 モヤモヤ会議を経たプランツ!のこれから
 モヤモヤ会議を振り返って/繰り返し発芽するモヤモヤの種/モヤモヤ会議を終えて

第3部 座談会――東北、文化の現場から
1 地域と文化施設、震災を前に
 来るべき市民のデジタルライフ/市民グループが作成した点字翻訳/神戸の震災でも見た景色/予算が底をついてターニングポイントに/方舟祭で美術館を開放/市のあらゆるセクションと協働
2 3・11混乱と地域の狭間で
 資材と工賃の高騰で進まぬ復旧工事/明かりの点いたところに集まる市民/被災地支援が殺到する大船渡のホール/物資保管庫になった美術館、動かせない空調/仕分けられた美術館/矛盾する国の補助制度/図書館の再開を待ち望んでいた市民
3 予算がゼロになるかもしれない
 再開に向けた4つの条件と市民メディアの可能性/「3がつ11にちをわすれないためにセンター」/話し合うこと自体を展示作品にした「考えるテーブル」/負い目、当事者、支援ー。てつがくカフェで出てきた言葉/4・11の余震で市の分庁舎になった別館/何かしなくてはと逸る気持ち/スタッフを冷静にさせた市民との対話
4 文化からの復興に向けて
 とにかく何かやろうという人と連帯を/日本初の軽自動車型ブックモービルを開発/読み聞かせと音楽や大道芸/仮設住宅の個人に電子ピアノを寄贈/震災を機に結成された「いわてフィル」/祭り、芸能の復活/心に刺さる3・11という表現/わすれないためにセンターとビデオカメラ
5 被災の隔たりを行き来する回路としての「わすれないためにセンター」
 インタビューすることで考える/ビデオカメラを持つ必然性と市民意識/市民サービスを提供する側とされる側の配置替え/被災と向き合うアーティスト/文化とアート/作品という形式で運ばれていくものと記録としてのアート/社会とアートの両方を行き来する/人のために何かを考える企画

6 この町を変えることを自分の仕事に
 まるかじり気仙沼ガイドブック/地域文化は人が使い続けてつながっていく/気仙沼には何もない/復旧復興の教科書になったガイドブック/地域に役に立つ美術館/決して古くない公民館活動/まちのリーダーとホールのプロデューサー/震災と表現、津波の災害史を常設展に/日本の人口減少と文化施設/文化施設とアーティストがつくる地域コミュニティ/文化施設が地域のコーディネーターに
7 避難所としての文化施設の存在価値
 劇場や美術館に対する価値観を変える/最先端の精神とは提供する側と提供される側を入れ替えながら考えていくこと/与えられた当事者性と獲得されていく当事者性/災害で生まれるユートピア、あっという間に閉じていった扉/属人かシステムか
8 東北の文化に誇りを持って
 東北という場所の気質が見えてくる/作家に守られた美術館/覚悟を決めてやるべきだと思うことをやる

第4部 未来に向けて
1 いわきにアリオスをつくり、将来に引き継ぐということ
 前提となる考え方/劇場計画プロジェクトチーム/劇場は広場である/日本の人口が減少に転じた/文化施設を核にしたコミュニティ/文化施設に問われていること
2 震災で近づいたいわきアリオスと市民の思い
 芸術文化は震災復興の力になる/いわきアリオスに伝えたいこと/市民のパートナーとしてのいわきアリオス
3 文化に託された試練と未来
 日常の中に続く被災と文化による復興/アートならではの被災地支援/打撃を受けた文化施設と避難所としての可能性/文化施設の底力/被災地に立ち、まちの声を聴くこと/民俗芸能の宝庫、東北/2012年3月11日のいわきアリオス/次の日本に向けて


地域と文化を結ぶ「縁側」のような施設になりたい

このページのトップへ