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芸術文化の価値とは何か  新刊

個人や社会にもたらす変化とその評価

芸術文化の価値とは何か

イギリス政府機関の研究成果の邦訳

著者 中村 美亜
Geoffrey Crossick
Patrycja Kaszynska
ジャンル 文化とまちづくり叢書
社会
アート・カルチャー
出版年月日 2022/09/05
ISBN 9784880655321
判型・ページ数 A5並製・364ページ
定価 3,850円(本体3,500円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

原著『Understanding the value of arts & culture 』 The AHRC cultural value project

 「なぜ芸術文化は必要なのか」「芸術文化がもたらす効果はどのように捉えられるのか」という問いに取り組んだイギリスの政府機関AHRC(芸術・人文学研究会議)〈文化的価値プロジェクト〉報告書(2018)の邦訳である。この研究は、実証的・科学的研究を扱っていながら、歴史的・哲学的に深い洞察に満ちており、国際的な反響を呼んだ。本書はブラジル、チェコ版に続く邦訳。

 本書の試みの主要目標の第一は「文化的価値を形づくるさまざまな構成要素を明らかにすること」。そして第二にはこれらの「要素を評価するために用いる方法論とそのエビデンスを検討し、新たな方法論を開発する」というもの。特に「個人の内省」(自分自身や自分の人生についての理解を深めること、他者に対する共感を高めること、人間の経験や文化の多様性を理解すること等)と「変化の状況の生成」(コミュニティ・社会・経済レベルへの波及)に焦点があてられ、「体験」「生態系」「方法論」の3点をつないで、芸術文化の価値を包括的に論じる。

 経済的インパクト、客観的エビデンス、学際的な戦略的研究を網羅、日本の旧来の研究と一線を画す研究者必読の成果である。


著者:ジェフリー・クロシック(Geoffrey Crossick)
ロンドン大学高等研究院教授。イギリス芸術・人文学研究会議の〈文化的価値プロジェクト〉でディレクターを務める。イギリス・ヨーロッパ近代史を専門とし、下級中産階級(職人や商人)の文化社会史、都市化に関する著作が多い。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ学長、ロンドン大学副総長などの要職を歴任。工芸協会会長。ホーニマン博物館、ギルドホール音楽演劇大学、国立映画テレビ学校の理事。

著者:パトリツィア・カジンスカ(Patricia Kaszynska)
ロンドン芸術大学社会デザイン研究所上席研究員。ウェストミンスターにある政策シンクタンクに勤務した後、芸術・人文学研究会議の〈文化的価値プロジェクト〉の専任研究員、それに続く〈文化的価値スコーピングプロジェクト〉のプロジェクトマネージャーを歴任。

訳者:中村美亜(なかむら・みあ)
九州大学大学院芸術工学研究院准教授。専門は芸術社会学。芸術活動が人や社会に変化をもたらすプロセスや仕組みに関する学際的研究、その知見を生かした文化政策の研究を行っている。多様性と包摂性、ジェンダー/セクシュアリティに関する著作も多い。編著に『文化事業の評価ハンドブック―新たな価値を社会にひらく』(水曜社、2021)、『ソーシャルアートラボ―地域と社会をひらく』(水曜社、2018)、単著に『音楽をひらく―アート・ケア・文化のトリロジー』(水声社、2013)など。日本文化政策学会理事。

*プロフィールは本書刊行時のものです。

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目次

第1章 文化的価値論争の用語の再考
従来の文化の価値の議論は、参加者の体験やその効果を十分に考慮せず、いくつかの重要な有用性を見過ごしていた。

第2章 横断的テーマ
ポピュラー文化と高尚文化の区別がますます曖昧になり、場所や方法が多様化している。

第3章 個人の内省
文化的価値において鍵となるのは、芸術文化体験が個人に内省を促す力である。

第4章 市民的関与―市民的主体性と市民活動への関与
芸術文化活動への参加が積極的な市民活動の促進につながるという主張について考える。

第5章 コミュニティ、再生、空間
創造産業、文化消費、クリエイティブ・クラス、コミュニティの間にある緊張関係を明らかにする。

第6章 経済―インパクト、イノベーション、生態系
経済的インパクトは、芸術文化の推進者がその経済的重要性を主張する主要な手段となっている。

第7章 健康、老化、幸福感
長期の芸術文化活動への関与は、健康に実証可能な効果をもたらすのだろうか。

第8章 教育の中での芸術―覚え書き
芸術教育が認知や行動の領域において、通常の教育より有意な効果を生むことが示されている。

第9章 方法論―評価のエビデンス、データ、多様性
本書が参照する研究の多くに見られる高い研究水準は、 研究と評価の双方において規範とされなければならない。

おわりに
芸術文化の活動や関与は、経済や社会に多くの直接的、時には即時的な便益を生み出す。個人・社会・経済レベルでの実験やリスクをとる、個人・コミュニティ・社会の課題を安全で非直接的な方法で内省するなどの数多くの波及効果ももたらす。

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