創造都市と社会包摂
文化多様性・市民知・まちづくり
創造都市論と社会包摂論を架橋し、世界的な都市再構築の流れのなかで、コミュニティの再生への胎動を描写する
著者 | 佐々木 雅幸 編著 水内 俊雄 編著 |
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ジャンル | 文化とまちづくり叢書 |
出版年月日 | 2009/08/08 |
ISBN | 9784880652207 |
判型・ページ数 | A5・316ページ |
定価 | 3,520円(本体3,200円+税) |
在庫 | 品切れ・重版未定 |
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内容説明
「創造都市」という新しい都市モデルは、芸術文化のもつ「創造性」を新産業や雇用の創出に役立て、ホームレスや環境問題の解決に生かし、都市を多面的に再生させる試みであり、EUが1985年から開始し、大きな成果を上げてきた「欧州文化都市(欧州文化首都)」の経験を総括するなかから生み出された都市モデルである。
都市や地域の経済的エンジンが大規模工場から、創造性あふれる企業や個人から構成される「創造産業」と「創造経済」にシフトし、芸術文化はそのための新たな社会的インフラストラクチュアと考えられる。
日本より一足早く製造業の衰退と空洞化に苦しんだ欧州において創造都市への取り組みが進んでいるのはこのような背景による。
もう一つのテーマである「社会包摂」とは「社会的排除を生みだす諸要因を取り除き、人々の社会参加を進め、他の人々との相互的な関係を回復あるいは形成すること」を指し社会的排除の対立概念であり、90年代後半よりEUにおける都市再生の目標の一つにも掲げられてきたものである。
「創造都市」も「社会包摂」も、新自由主義的改革による「福祉国家」の解体を乗り越えて、新しい分権的な福祉社会をめざす共通の土壌の上に位置する社会改革の試みである。
本書は、芸術文化のもつ創造力、とりわけ、社会的に排除された人々をエンパワーメントする力に着目しつつ創造都市論と社会包摂論を架橋し、世界的な都市再構築の流れのなかで、コミュニティの再生への胎動を描写するものであり、とりわけ、悩める大都市・大阪の再生に向け足元で進む社会実験に参与しつつ、分析を進めたものである。
【著者】佐々木 雅幸(ささき・まさゆき)
1949 年生まれ。京都大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程修了、博士( 経済学)。金沢大学経済学部助教授、同教授、ボローニャ大学客員研究員、立命館大学政策科学部教授、大阪市立大学教授、同大学院創造都市研究教授を経て2014 年より同志社大学教授。2014 年4 月より2018 年3 月まで文化庁 文化審議会文化政策部会委員。1999 年度金沢市文化活動賞。著書に『創造都市への挑戦』(岩波書店)、『創造都市の経済学』(学芸出版社)、『創造農村』(共著, 学芸出版社)『創造都市と社会包摂』(共著, 水曜社)、など多数。
*プロフィールは本書刊行時のものです。
目次
第1部 進化する創造都市、その文化戦略
chapter1 文化多様性と社会包摂に向かう創造都市
佐々木雅幸
chapter2 都市の創造的縮小の時代
ー人口減少、環境容量枯渇時代の「都市のかたち」
矢作弘
chapter3 グローバル創造都市の文化ブランド戦略
ー都市の包容力・バランス・俊敏性
岡野浩
chapter4 日本の創造産業集積
ー家庭用ビデオゲーム産業の集積利益
半澤誠司
chapter5 成長するアジアの創造産業
ー世界のエンタテイメント業界のグローバル化と再編
橋爪紳也 杉浦幹男
chapter6 アジアの都市政策における二つの包摂
瀬田史彦
第2部 大阪の市民知が再構築する歴史・文化空間
chapter7 大阪の長屋建築の伝統と保存活用ー豊崎プラザの実験
谷直樹
chapter8 歴史的都心の再生ー船場再生の胎動
嘉名光市 岡伸一
chapter9 近世大坂の都市下層ー勧進宗教者の存在形態
塚田孝
第3部 社会包摂に向けて、新都市空間論の誕生
chapter10 社会包摂に向き合うアートマネジメント
ーボトムアップのガバナンス形成へ向けて
中川眞
chapter11 社会包摂に向けた地域組織の取り組みとその可能性
ー大阪・釜ヶ崎を事例として
原口剛 西口宗宏
chapter12 東アジア大都市の外国人労働者と民族関係
谷 富夫
chapter13 「都市への権利」とソーシャル・ミックス
ーフランスの住宅政策に学ぶ
檜谷美恵子
chapter14 脱野宿とホームレス支援からみた都市の社会保障の再構築
ー多様な社会参加の方法を創出するために
水内俊雄
あとがき