内容説明
田中正造、荒畑寒村、小野崎一徳……彼等が追求した正義、報道とはなんだったのか?
八ッ場ダム取材の過程で甦ってきたのは利根川水系上流の足尾銅山を舞台にした鉱毒事件だった。
鉱毒被害を天皇に直訴しよ うとした義憤の人・田中正造。
誰知らぬまま忘れ去られようとしていた一村の消滅を『谷中村滅亡記』に著した弱冠二十歳のジャーナリスト荒畑寒村。
淡々と足尾銅山の盛衰を記録し続けた在野の写真家・小野崎一徳。
彼らの事蹟を追うごとに、記者クラブにすがり検察のリークにもたれる現代ジャーナリズムの脆弱性が浮き彫りになる。真実を明らかにする報道の良心とは何か。
マスメディアを救うのは「発表ジャーナリズム」から「調査ジャーナリズム」への回帰だ。
足尾開山400年の今年、元NHK解説委員渾身の書き下ろしで描く日本ジャーナリズム再生へのロードマップ。
【著者】小出 五郎(こいで・ごろう)
日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)前会長、元NHK主幹。1964年東京大学卒業後NHK入局。 科学番組ディレクターとしてNHK特集「核戦争後の地球」で芸術祭大賞イタリア賞を受賞、「驚異の小宇宙・ 人体」で日本賞を受賞。 1989年NHK解説委員、主として科学技術の分野を担当。2010年第55回前島賞受賞。主著に『仮説の検証・科学ジャーナリストの仕事』『戦争する国、平和する国』など。
八ッ場ダム取材の過程で甦ってきたのは利根川水系上流の足尾銅山を舞台にした鉱毒事件だった。
鉱毒被害を天皇に直訴しよ うとした義憤の人・田中正造。
誰知らぬまま忘れ去られようとしていた一村の消滅を『谷中村滅亡記』に著した弱冠二十歳のジャーナリスト荒畑寒村。
淡々と足尾銅山の盛衰を記録し続けた在野の写真家・小野崎一徳。
彼らの事蹟を追うごとに、記者クラブにすがり検察のリークにもたれる現代ジャーナリズムの脆弱性が浮き彫りになる。真実を明らかにする報道の良心とは何か。
マスメディアを救うのは「発表ジャーナリズム」から「調査ジャーナリズム」への回帰だ。
足尾開山400年の今年、元NHK解説委員渾身の書き下ろしで描く日本ジャーナリズム再生へのロードマップ。
【著者】小出 五郎(こいで・ごろう)
日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)前会長、元NHK主幹。1964年東京大学卒業後NHK入局。 科学番組ディレクターとしてNHK特集「核戦争後の地球」で芸術祭大賞イタリア賞を受賞、「驚異の小宇宙・ 人体」で日本賞を受賞。 1989年NHK解説委員、主として科学技術の分野を担当。2010年第55回前島賞受賞。主著に『仮説の検証・科学ジャーナリストの仕事』『戦争する国、平和する国』など。
目次
はじめにーなぜ「仮説の検証」か?
第一章 上流の住民、下流の住民
品木湖の水は緑白色だった/「死の川」は甦ったか/四〇年間「工事中」/「生活再建工事」とは?/「生活再建」ことはじめ/首都圏の水源、利根川/利根川は、やはり大河だ/上流住民と下流住民/渡良瀬遊水池
第二章 荒畑寒村ー二十歳のジャーナリストの挑戦
一. 憤激が原動力、「谷中村滅亡史」
荒畑寒村、八四歳でも闘士/自主講座「公害言論」/「谷中村滅亡史」への道/「谷中村滅亡史」概略/第一章の「起因」と第二章の「第一期」/第三章の「第二期」/第四章の「第三期」/第五章の「第四期」
二. 鉱毒問題、社会の注目を集める
第六章の「川俣事件」/第七章「田中正造、天皇に直訴」/直訴を演出したジャーナリストたち/報道の原則、今昔/第八章と第九章の「鉱毒の真因」/第十章と第十一章の「谷中村貯水池化計画」/第十二章と第十三章の「買収のアメとムチ」
三.谷中村、水面下に沈む
第十四章と第十五章の「権力の無法」/第十六章と第十七章の「金の亡者の陰謀」/第十八章と第十九章と第二十章の「地域社会の崩壊」/第二十一章と第二十二章の「滅亡へのステップ」/第二十三章と第二十四章と第二十五章の「公共工事批判」/第二十六章の「谷中村滅亡報告」/最終章六ページの「結論」
四. 明治時代の人権感覚と言論の自由
一週間で書いたのか?/ジャーナリスト寒村の志/北海道の白地図を貼った/囚人道路と呼ばれる国道/なぜ囚人だったのか/記者が無法を見過ごしたわけ/著書発禁の根拠/政府が記者を取り込んだ
五. 発表ジャーナリズムの誕生
保護育成された記者クラブ/情報のバレーボール/情報仲間の落とし穴/三方、一両得/でっちあげの大逆事件/新聞社の方針転換/政権交代でジャーナリズムは変わるか?
第三章 小野寺一徳ーフォト・ジャーナリストのパイオニア
一. 足尾銅山:渡良瀬川上流のヤマへ
渡良瀬川を遡ると/日本最古の学校/あかがね街道/足尾銅山観光/小野崎敏さんと出会う/祖父は小野崎一徳/細尾峠越え/写真術の魅力/伝来に三ルート/写真師、小野崎蔵吉の誕生/古川市兵衛の賭け/鉱山に最先端技術が要る/先端技術の出会い/記録写真へのこだわり
二. 最先端技術を記録した写真
一徳の写真を収集/一徳の写真と遺品/近代の具現化、足尾/削岩機とダイナマイト/日本初の水力発電所/手選鉱から機械選鉱へ/製錬の革新:ベッセマー転炉/足尾製錬所、「解体中」/空を行く資材/ガソリンカー復活!/サポーター、渋沢栄一/サポーター、陸奥宗光/銅は第二の輸出品/環境が経済をリードする
三. 足尾を支えた人々
足尾、鉱都となる/夏目漱石の「坑夫」/南京米、葬列、南京虫/抗内の迷路を行く/賑わう足尾/人材育成に寄与/「木が金属を生む」/写真に残る森
四. 一五〇日の鉱毒予防工事
足尾荒廃の原因/土砂が渡良瀬川を埋めた/大洪水続発/鉱毒予防工事命令/脱硫塔建設/脱硫塔が被害を拡大/松木村の滅亡/松木村の運命も記録した/自然復元へ/映像は時空を超える/「一徳・敏のコラボ」
第四章 ジャーナリズムー民主主義社会の公共財
一. 田中正造に「記者の志」
足尾視察のファッション/「予は下野の百姓なり」/「生きているうち良き人となれ」/「国会開設は目下の急務」/あだ名は「栃鎮」/「天皇陛下の大法となれば……」
二. ジャーナリストの志
「進化」という自然法則/巨大科学技術への夢ー六〇年代/新米ディレクターの仕事/職場における労使協調/「結果オーライ」の人生訓?/安全安心の科学技術へー七〇年代/データ主義科学番組の成長/組織は管理強化に向かう/未来への選択肢を提示ー八〇年代/核廃絶、ザ・ブレイン、人体/「マルチ・メディア」化の加速/経済に資する科学技術へー九〇年代、そしていま/政治介入への抵抗感が薄れる/政権交代時代の始まり/事業仕分けの偏り報道/ジャーナリズムの進化へ/アメリカのNPOジャーナリズム/みなさまのNPO、「NHK」の活用
謝辞
参考資料・文献
第一章 上流の住民、下流の住民
品木湖の水は緑白色だった/「死の川」は甦ったか/四〇年間「工事中」/「生活再建工事」とは?/「生活再建」ことはじめ/首都圏の水源、利根川/利根川は、やはり大河だ/上流住民と下流住民/渡良瀬遊水池
第二章 荒畑寒村ー二十歳のジャーナリストの挑戦
一. 憤激が原動力、「谷中村滅亡史」
荒畑寒村、八四歳でも闘士/自主講座「公害言論」/「谷中村滅亡史」への道/「谷中村滅亡史」概略/第一章の「起因」と第二章の「第一期」/第三章の「第二期」/第四章の「第三期」/第五章の「第四期」
二. 鉱毒問題、社会の注目を集める
第六章の「川俣事件」/第七章「田中正造、天皇に直訴」/直訴を演出したジャーナリストたち/報道の原則、今昔/第八章と第九章の「鉱毒の真因」/第十章と第十一章の「谷中村貯水池化計画」/第十二章と第十三章の「買収のアメとムチ」
三.谷中村、水面下に沈む
第十四章と第十五章の「権力の無法」/第十六章と第十七章の「金の亡者の陰謀」/第十八章と第十九章と第二十章の「地域社会の崩壊」/第二十一章と第二十二章の「滅亡へのステップ」/第二十三章と第二十四章と第二十五章の「公共工事批判」/第二十六章の「谷中村滅亡報告」/最終章六ページの「結論」
四. 明治時代の人権感覚と言論の自由
一週間で書いたのか?/ジャーナリスト寒村の志/北海道の白地図を貼った/囚人道路と呼ばれる国道/なぜ囚人だったのか/記者が無法を見過ごしたわけ/著書発禁の根拠/政府が記者を取り込んだ
五. 発表ジャーナリズムの誕生
保護育成された記者クラブ/情報のバレーボール/情報仲間の落とし穴/三方、一両得/でっちあげの大逆事件/新聞社の方針転換/政権交代でジャーナリズムは変わるか?
第三章 小野寺一徳ーフォト・ジャーナリストのパイオニア
一. 足尾銅山:渡良瀬川上流のヤマへ
渡良瀬川を遡ると/日本最古の学校/あかがね街道/足尾銅山観光/小野崎敏さんと出会う/祖父は小野崎一徳/細尾峠越え/写真術の魅力/伝来に三ルート/写真師、小野崎蔵吉の誕生/古川市兵衛の賭け/鉱山に最先端技術が要る/先端技術の出会い/記録写真へのこだわり
二. 最先端技術を記録した写真
一徳の写真を収集/一徳の写真と遺品/近代の具現化、足尾/削岩機とダイナマイト/日本初の水力発電所/手選鉱から機械選鉱へ/製錬の革新:ベッセマー転炉/足尾製錬所、「解体中」/空を行く資材/ガソリンカー復活!/サポーター、渋沢栄一/サポーター、陸奥宗光/銅は第二の輸出品/環境が経済をリードする
三. 足尾を支えた人々
足尾、鉱都となる/夏目漱石の「坑夫」/南京米、葬列、南京虫/抗内の迷路を行く/賑わう足尾/人材育成に寄与/「木が金属を生む」/写真に残る森
四. 一五〇日の鉱毒予防工事
足尾荒廃の原因/土砂が渡良瀬川を埋めた/大洪水続発/鉱毒予防工事命令/脱硫塔建設/脱硫塔が被害を拡大/松木村の滅亡/松木村の運命も記録した/自然復元へ/映像は時空を超える/「一徳・敏のコラボ」
第四章 ジャーナリズムー民主主義社会の公共財
一. 田中正造に「記者の志」
足尾視察のファッション/「予は下野の百姓なり」/「生きているうち良き人となれ」/「国会開設は目下の急務」/あだ名は「栃鎮」/「天皇陛下の大法となれば……」
二. ジャーナリストの志
「進化」という自然法則/巨大科学技術への夢ー六〇年代/新米ディレクターの仕事/職場における労使協調/「結果オーライ」の人生訓?/安全安心の科学技術へー七〇年代/データ主義科学番組の成長/組織は管理強化に向かう/未来への選択肢を提示ー八〇年代/核廃絶、ザ・ブレイン、人体/「マルチ・メディア」化の加速/経済に資する科学技術へー九〇年代、そしていま/政治介入への抵抗感が薄れる/政権交代時代の始まり/事業仕分けの偏り報道/ジャーナリズムの進化へ/アメリカのNPOジャーナリズム/みなさまのNPO、「NHK」の活用
謝辞
参考資料・文献