内容説明
近松門左衛門とメスタージオ
鶴屋南北とロッシーニ
河竹黙阿弥とヴェルディ……。
イタリアと日本の芸術はここまで似ている。
西暦1600年頃に、日本とイタリアでほぼ同時期にオペラと歌舞伎という極めて類似した芸能が誕生した。それには非常によく似た歴史的、地理的、民族的土壌があったからである。元来、大衆の極めて俗っぽい道楽であったオペラと歌舞伎はいかにして磨かれ美の極致に至ったのか。眼と耳の最高の贅沢であり、美しい音とリズムで築き上げられてゆく虚構の世界の類似性を探る。
【著者】永竹 由幸(ながたけ・よしゆき)
昭和13年東京築地に生まれ。慶応義塾中等部の頃より歌舞伎座の三階立見席や藤原歌劇団練習所に通う。慶應大学オペラ研究会設立、慶應義塾百年記念に若杉 弘指揮メノッティ「電話」を演出。三井物産入社後は同社イタリア修業生としてボローニャ大学留学。東京芸術大学講師、昭和音楽大学教授、尚美学園大学客員 教授などを歴任。平成18年イタリア政府よりコメンダトーレ勲章受章。 主著として『オペラ名曲百科』、『ヴェルディのオペラ』(音楽之友社)、『椿姫とは誰か』(丸善)、『痛快!オペラ学』(集英社インターナショナル)ヴォ ルフ=フェラーリの生涯と作品(水曜社)ほか。
*プロフィールは本書刊行時のものです。
目次
大序・第一幕 オペラと歌舞伎の誕生
第一場 オペラと歌舞伎はどうして生まれたか/第二場 オペラと歌舞伎の歴史的背景/第三場 オペラと歌舞伎の誕生日/第四場 その誕生はひょうたんから駒/第五場 ギリシャ悲劇と能の対比/第六場 リュリ(一六三二〜一六八七年)、ラモー(一六八三〜一七六四年)、ヘンデル(一六八五〜一七五九年)と竹田出雲(?〜一七四七年)、三好松洛(一六九六?〜一七七二年?)、並木千柳(宗輔)(一六九五〜一七五一年)/第七場 近松半二(一七二四?〜一七八三年)とグルック(一七一四〜一七八七年)のオペラ改革
二段目・第二幕 テアトロと芝居
第一場 その発端/第二場 年中行事としてのオペラと歌舞伎/第三場 オペラ・ハウスと芝居小屋/第四場 劇場の構造について/第五場 入場料/第六場 オペラ歌手と歌舞伎役者の収入/第七場 観客/第八場 大道具と仕掛け
三段目・第三幕 女形とカストラート
第一場 女形について/第二場 カストラートについて/第三場 女形とカストラートの芸術的貢献
四段目・第四幕 ドラマとしてのオペラと歌舞伎
第一場 その歴史的背景のもとのもと/第二場 ドラマとしてのオペラと歌舞伎の誕生/第三場 近松とメタスタージオ/第四場 荒事と和事ーヴェネツィアとナポリ/第五場 パロディとしてのドラマ(丸本歌舞伎とバロック・オペラ)
五段目・第五幕 花咲くオペラと歌舞伎の最盛期
第一場 ロッシーニと鶴屋南北/第二場 狂乱物/第三場 河竹黙阿弥とジュゼッペ・ヴェルディ/第四場 ボーイトと九代目團十郎/第五場 ヴェリズモ・オペラと生世話物/第六場 マリア・カラスと歌右衛門
大詰・フィナーレのストレッタ
打ち出し・カーテンコール
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