みんなの文化政策講義
文化的コモンズをつくるために
著者 | 藤野 一夫 著 |
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ジャンル | 文化とまちづくり叢書 社会 |
出版年月日 | 2022/03/26 |
ISBN | 9784880655192 |
判型・ページ数 | A5並製・296ページ |
定価 | 2,970円(本体2,700円+税) |
在庫 | 在庫あり |
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内容説明
口語で語る紙上講義!
文化政策を基礎から学びたい市民のための新テキスト誕生!
架空の16講義を通して著者が口語で語りかける、新様式の文化政策テキストが生まれました。
「文化」と「政策」は、どのように関係するのだろうか? 自由な個人の創造活動と、行政が策定する文化を管理する政策(法制度や基本計画)は共存できるのだろうか? これまで語られることのなかった市民の立場、視点から文化政策を捉えてみようとする試みです。
本書はⅡ部構成。Ⅰ部基礎編では、文化政策の歴史的・理論的検討を土台に政策と法整備の概観を経て現代社会におけるコミュニティのありかたという根本的な問いに対しての解を求めます。Ⅱ部発展編では文化多様性に支えられる市民社会に生まれる「文化的コモンズ」醸成の方途を探ります。
市民、学生、行政職員、芸術文化関係者のみなさんに、広くご一読いただきたい1冊です。
【著者】藤野 一夫(ふじの・かずお)
1958年東京生まれ。芸術文化観光専門職大学副学長。神戸大学名誉教授。日本文化政策学会副会長、(公財)びわ湖芸術文化財団理事、(公財)神戸市民文化振興財団理事ほか、文化審議会等の委員を多数兼任。編著に『公共文化施設の公共性─運営・連携・哲学』、『基礎自治体の文化政策─まちにアートが必要なわけ』(以上水曜社)『地域主権の国 ドイツの文化政策─人格の自由な発展と地方創生のために』(美学出版)『ワーグナー事典』(東京書籍)、ワーグナー『友人たちへの伝言』(共訳、法政大学出版会)など。
*プロフィールは本書刊行時のものです。
文化政策を基礎から学びたい市民のための新テキスト誕生!
架空の16講義を通して著者が口語で語りかける、新様式の文化政策テキストが生まれました。
「文化」と「政策」は、どのように関係するのだろうか? 自由な個人の創造活動と、行政が策定する文化を管理する政策(法制度や基本計画)は共存できるのだろうか? これまで語られることのなかった市民の立場、視点から文化政策を捉えてみようとする試みです。
本書はⅡ部構成。Ⅰ部基礎編では、文化政策の歴史的・理論的検討を土台に政策と法整備の概観を経て現代社会におけるコミュニティのありかたという根本的な問いに対しての解を求めます。Ⅱ部発展編では文化多様性に支えられる市民社会に生まれる「文化的コモンズ」醸成の方途を探ります。
市民、学生、行政職員、芸術文化関係者のみなさんに、広くご一読いただきたい1冊です。
【著者】藤野 一夫(ふじの・かずお)
1958年東京生まれ。芸術文化観光専門職大学副学長。神戸大学名誉教授。日本文化政策学会副会長、(公財)びわ湖芸術文化財団理事、(公財)神戸市民文化振興財団理事ほか、文化審議会等の委員を多数兼任。編著に『公共文化施設の公共性─運営・連携・哲学』、『基礎自治体の文化政策─まちにアートが必要なわけ』(以上水曜社)『地域主権の国 ドイツの文化政策─人格の自由な発展と地方創生のために』(美学出版)『ワーグナー事典』(東京書籍)、ワーグナー『友人たちへの伝言』(共訳、法政大学出版会)など。
*プロフィールは本書刊行時のものです。
目次
第Ⅰ部 基礎編 文化政策と文化行政
講義1 文化政策と文化行政
文化政策と国家/文化政策のさまざまなタイプ/戦前日本の文化政策/国内文化政策と対外文化政策/日独文化協定/戦後の社会教育/文化行政の時代/市民自治と文化行政/文化ホールはまちをつくってきたのか?/文化行政からアートマネジメントへ
講義2 文化・芸術と文化政策の対象
はじめに/自然・人間・文化/人為としての文化/文化と芸術/芸術の自律性/自律性の呪縛/自然と宗教からの芸術の自律/二つの権力からの自律/文化産業と芸術の自律/人づくり、社会づくり、まちづくり/文化政策は何をめざすのか/宮沢賢治の芸術論から
講義3 国の文化政策と法整備の問題
はじめに/文化芸術振興基本法成立までの経緯/国家政策としての文化政策の推進/国による舞台芸術助成の拡大とその背景/文化行政の総合的推進/文化芸術振興基本法の問題点/文化権を考える/基本法改正による改善と限界/新設された項目の可能性と課題
講義4 自治体文化政策とコミュニティ創生
自治体文化政策の法整備/いまわたしたちはどこにいるのか/コミュニティとは何か/ローカルコミュニティにおける2つの社会/社会構想の2つの様式―他者の両義性/<関係のユートピア>と<関係のルール>の関係性/交響するコミューン・の・自由な連合/自治体文化政策による<交響するコミューン>の創生/明石における実践事例
講義5 文化振興条例と基本計画の状況と理念
はじめに/自治体における法整備の4タイプ/文化振興条例の構造/文化振興条例の位置付け/全国の文化振興条例と基本計画の制定状況/文化振興条例と基本計画の現在/政令市の分析/文化振興条例と基本計画はなぜ必要なのか/観光振興に関する条例
講義6 アートマネジメントがめざすもの
はじめに/生きる証としての「芸術の力」/アートマネジメントの使命/アートマネジメントの公共性/アートと社会をつなぐ/首都圏以外の文化経済圏の可能性/これからのアートマネジメント
講義7 劇場、コンサートホールの仕事
公立文化施設とは/公立文化施設と公共文化施設/公共文化施設のタイプ/多目的ホール/劇場とコンサートホール/専門職としてのアートマネジャー/ドイツの公立劇場/日本の公共劇場はあるのか/公共セクターは劇場とどう関わるべきか/公共文化施設と「文化的コモンズ」の形成/ドラマトゥルクの必要性
講義8 文化政策・文化振興組織の多様性と指定管理者制度の課題
文化振興組織の多様性/神戸の財団が弱体化した理由/財団改革の過程/神戸文化ホールの非公募化/豊中市の指定管理者の選定/オープニングラインナップの衝撃/指定管理者制度の落とし穴/文化振興組織の機能別類型/さまざまなアーツカウンシル/文化政策・文化振興組織の5類型
第Ⅱ部 発展編 文化多様性とアートマネジメント
講義9 感性の復権と文化的コモンズ
はじめに/日本社会への違和感と危機感/イベントと文化との違い/社会的排除と社会的包摂の共犯関係/新自由主義からのクリエイティビティの救済/文化的コモンズの形成/広報マーケティングの功罪/地方創生と文化的植民地化/アートリテラシーと情操教育/美的判断力の自発的形成/感性の共同体と文化政策/社会的なものと歓待/感性の共同体としての文化的コモンズ
講義10 都市コモンズの悲劇を超えて
文化的コモンズの定義/コーディネーターの役割/文化的コモンズ再考/「社」と文化/コモンズの悲劇と新自由主義/文化的コモンズの特性
講義11 創造都市と「都市への権利」の相克
現代日本の根本問題/都市への文化権とコミュニティへの権利/コミュニティとアート・プロジェクト/ネオリベラリズムとコミュニティ/創造都市ハンブルクと都市への権利/ジェントリフィケーションとアート/ケイパビリティと文化政策
講義12 文化的コモンズとしてのゲノッセンシャフト
初期マルクスにみる社会的存在としての人間/マルクスとワーグナー/ワーグナーの文化政策論/解放の契機としてのゲノッセンシャフト/未来の芸術作品/テンニエスと賀川豊彦/感覚の共同性としての綜合芸術/感覚の復権と自由な世界市民社会への道
講義13 文化多様性とマイノリティの文化権
はじめに/国民国家と多文化主義/文化政策におけるマイノリティの文化権/国際法にみるマイノリティの文化権/文化多様性から文化多元主義へ/マイノリティ・コミュニティと文化多元主義のアポリア/「文化多様性に関する世界宣言」と日本の対応
講義14 文化多様性条約の政治経済学
欧・米の価値観のはざまに置かれた日本/言語法と言語権/欧州審議会によるマイノリティの権利保障/民族的少数者保護枠組条約(1995年署名開放)/「欧州憲章」および「枠組条約」とフランス/GATT「文化特例」の両義性/文化特例から文化多様性へ/「文化多様性条約」の採択とカナダの牽引力/文化多様性をめぐる宣言と条約の違い
講義15 芸術の自律性と表現の自由
はじめに/アートの道具主義化の功罪/芸術の自律性と表現の自由/美的自律性という革命/芸術の自律性への長い道/シラーの美的共同体/精神の自由/言論の自由と表現の自由/芸術における表現の自由/ミル『自由論』から/フンボルトにおける自由と多様性
講義 16 現代ドイツの文化政策から
科学的論拠と美感的構想力/社会構造政策としての文化政策/文化的生存配慮と民主主義/文化政策を支える市民社会/文化の現状是認的性格の克服/分権的構造によるレジリエンス/日本版文化評議会の必要性/日本における文化の自己疎外/インターローカルな文化的コモンズに向けて
講義1 文化政策と文化行政
文化政策と国家/文化政策のさまざまなタイプ/戦前日本の文化政策/国内文化政策と対外文化政策/日独文化協定/戦後の社会教育/文化行政の時代/市民自治と文化行政/文化ホールはまちをつくってきたのか?/文化行政からアートマネジメントへ
講義2 文化・芸術と文化政策の対象
はじめに/自然・人間・文化/人為としての文化/文化と芸術/芸術の自律性/自律性の呪縛/自然と宗教からの芸術の自律/二つの権力からの自律/文化産業と芸術の自律/人づくり、社会づくり、まちづくり/文化政策は何をめざすのか/宮沢賢治の芸術論から
講義3 国の文化政策と法整備の問題
はじめに/文化芸術振興基本法成立までの経緯/国家政策としての文化政策の推進/国による舞台芸術助成の拡大とその背景/文化行政の総合的推進/文化芸術振興基本法の問題点/文化権を考える/基本法改正による改善と限界/新設された項目の可能性と課題
講義4 自治体文化政策とコミュニティ創生
自治体文化政策の法整備/いまわたしたちはどこにいるのか/コミュニティとは何か/ローカルコミュニティにおける2つの社会/社会構想の2つの様式―他者の両義性/<関係のユートピア>と<関係のルール>の関係性/交響するコミューン・の・自由な連合/自治体文化政策による<交響するコミューン>の創生/明石における実践事例
講義5 文化振興条例と基本計画の状況と理念
はじめに/自治体における法整備の4タイプ/文化振興条例の構造/文化振興条例の位置付け/全国の文化振興条例と基本計画の制定状況/文化振興条例と基本計画の現在/政令市の分析/文化振興条例と基本計画はなぜ必要なのか/観光振興に関する条例
講義6 アートマネジメントがめざすもの
はじめに/生きる証としての「芸術の力」/アートマネジメントの使命/アートマネジメントの公共性/アートと社会をつなぐ/首都圏以外の文化経済圏の可能性/これからのアートマネジメント
講義7 劇場、コンサートホールの仕事
公立文化施設とは/公立文化施設と公共文化施設/公共文化施設のタイプ/多目的ホール/劇場とコンサートホール/専門職としてのアートマネジャー/ドイツの公立劇場/日本の公共劇場はあるのか/公共セクターは劇場とどう関わるべきか/公共文化施設と「文化的コモンズ」の形成/ドラマトゥルクの必要性
講義8 文化政策・文化振興組織の多様性と指定管理者制度の課題
文化振興組織の多様性/神戸の財団が弱体化した理由/財団改革の過程/神戸文化ホールの非公募化/豊中市の指定管理者の選定/オープニングラインナップの衝撃/指定管理者制度の落とし穴/文化振興組織の機能別類型/さまざまなアーツカウンシル/文化政策・文化振興組織の5類型
第Ⅱ部 発展編 文化多様性とアートマネジメント
講義9 感性の復権と文化的コモンズ
はじめに/日本社会への違和感と危機感/イベントと文化との違い/社会的排除と社会的包摂の共犯関係/新自由主義からのクリエイティビティの救済/文化的コモンズの形成/広報マーケティングの功罪/地方創生と文化的植民地化/アートリテラシーと情操教育/美的判断力の自発的形成/感性の共同体と文化政策/社会的なものと歓待/感性の共同体としての文化的コモンズ
講義10 都市コモンズの悲劇を超えて
文化的コモンズの定義/コーディネーターの役割/文化的コモンズ再考/「社」と文化/コモンズの悲劇と新自由主義/文化的コモンズの特性
講義11 創造都市と「都市への権利」の相克
現代日本の根本問題/都市への文化権とコミュニティへの権利/コミュニティとアート・プロジェクト/ネオリベラリズムとコミュニティ/創造都市ハンブルクと都市への権利/ジェントリフィケーションとアート/ケイパビリティと文化政策
講義12 文化的コモンズとしてのゲノッセンシャフト
初期マルクスにみる社会的存在としての人間/マルクスとワーグナー/ワーグナーの文化政策論/解放の契機としてのゲノッセンシャフト/未来の芸術作品/テンニエスと賀川豊彦/感覚の共同性としての綜合芸術/感覚の復権と自由な世界市民社会への道
講義13 文化多様性とマイノリティの文化権
はじめに/国民国家と多文化主義/文化政策におけるマイノリティの文化権/国際法にみるマイノリティの文化権/文化多様性から文化多元主義へ/マイノリティ・コミュニティと文化多元主義のアポリア/「文化多様性に関する世界宣言」と日本の対応
講義14 文化多様性条約の政治経済学
欧・米の価値観のはざまに置かれた日本/言語法と言語権/欧州審議会によるマイノリティの権利保障/民族的少数者保護枠組条約(1995年署名開放)/「欧州憲章」および「枠組条約」とフランス/GATT「文化特例」の両義性/文化特例から文化多様性へ/「文化多様性条約」の採択とカナダの牽引力/文化多様性をめぐる宣言と条約の違い
講義15 芸術の自律性と表現の自由
はじめに/アートの道具主義化の功罪/芸術の自律性と表現の自由/美的自律性という革命/芸術の自律性への長い道/シラーの美的共同体/精神の自由/言論の自由と表現の自由/芸術における表現の自由/ミル『自由論』から/フンボルトにおける自由と多様性
講義 16 現代ドイツの文化政策から
科学的論拠と美感的構想力/社会構造政策としての文化政策/文化的生存配慮と民主主義/文化政策を支える市民社会/文化の現状是認的性格の克服/分権的構造によるレジリエンス/日本版文化評議会の必要性/日本における文化の自己疎外/インターローカルな文化的コモンズに向けて