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武智鉄二という藝術

あまりにコンテンポラリーな

武智鉄二という藝術

古典芸術の保護育成者。新しい芸術理論の提唱者。「武智歌舞伎」 実践者としての評価。再評価高まる奇才の生涯を描く

著者 森 彰英
ジャンル オペラ・音楽他
出版年月日 2011/01/27
ISBN 9784880652474
判型・ページ数 A5上製・368ページ
定価 3,080円(本体2,800円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

“伝統”の守護者、“異端”の演出家、“エロス”の解放者。
豪放と虚栄、奢侈と零落……
芸術の落とし子は自らが時代を体現していた。

武智鉄二 大正元年(1912年)? 昭和63年(1988年)
彼ほど前半生と後半生とで、評価が百八十度変わる男はいない。

武智は関西の資産家の息子として生まれ、京都帝国大学に進学。
父の死後、莫大な資産を受け継ぐ。

演劇評論家として雑誌「劇評」「観照」「演劇評論」を刊行。
第二次大戦中、能・浄瑠璃・落語などの名人を集め、少人数で鑑賞する「断絃会」を発足。その費用は月に二万円、現在の金額で一千万円以上ともいわれる。

断絃会で知り合った谷崎潤一郎をはじめとする人脈、ありあまる資金。そして歌舞伎の動きを日本古来の「ナンバ」(右手と右足、左手と左足を同時に出す動き)にまで立ち返り、原作尊重主義とリアリズム、新しい演劇理論での歌舞伎実験的公演を演出する。

そこでは実川延二郎(現・延若)、中村扇雀(現・坂田藤十郎)、坂東鶴之助(現・中村富十郎)市川莚蔵(故・市川雷蔵)、嵐鯉昇(現・北上弥太郎)らを輩出し沈滞気味の歌舞伎界に強烈な刺激を与え、扇雀・鶴之助の人気が沸騰“。扇鶴(せんかく)時代”という語も生む。これがいわゆる「武智歌舞伎」である。

古典芸術の保護育成者。新しい芸術理論の提唱者。実践者としての評価。
さらにオペラの世界まで武智の演出は広がるが……。

武智の後半生は、ポルノ映画をつくり続ける。しかし、そこに芸術的価値を論ずる人は少ない。
映画「白日夢」は愛染恭子・佐藤慶のホンバンが話題となる。
映画「黒い雪」は公開と同時に「わいせつ図画公然陳列罪」に問われ裁判となる。
そして参議院選挙に自由民主党より出馬、落選。
怪しげなサブカルチャーの仕掛け人。
これらの仕事に対する評価は芳しくない。
再評価の機運が高まる武智鉄二、初の評伝。

【著者】森彰英(もり・あきひで)
東京都生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)卒。出版社編集者を経て独立。以後フリーとして取材執筆活動をつづける。主著として『イベントプロデューサー列伝』(日経BP社)、『行動する異端 秦豊吉と丸木砂土』(TBSブリタニカ)、『音羽の杜の遺伝子』(リヨン社)など。
*プロフィールは本書刊行時の物です。

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目次

まえがき

序 章  今なお見え隠れする「武智鉄二」
第一章  武智鉄二がいた時代
第二章  対極を生き抜いて
第三章  異才のルーツ
第四章  ぜいたくのレッスン
第五章  「滝川事件」と祇園と速水御舟、そして劇評へ
第六章  『かりの翅』の世界
第七章  「断絃会」の日々
第八章  「武智歌舞伎」の栄光
第九章  戦闘的論争者の挫折
第十章  奇妙な裁判劇
第十一章 果てしなき迷走
第十二章 武智鉄二は「終わらない」か

武智鉄二年譜
参考文献
あとがき

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