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談 no.106

人と動物 動物は動物なのか

談 no.106

文化、芸術、思想、科学などについて各界気鋭の論壇を招き、深く掘り下げるワンテーマ誌。

著者 公益財団法人 たばこ総合研究センター 編著
藤田 和生
山口 未花子
金森 修
シリーズ
出版年月日 2016/06/30
ISBN 9784880653907
判型・ページ数 B5並製・82ページ
定価 880円(本体800円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

特集「人間と動物……動物は動物なのか」

私たちが、生きるなかでかかわる生物はもとより人間だけではない。それは食料であったり、脅威であったりしたかもしれない。しかし、現代社会において、人間以外のさまざまな動物は、パートナーであり、癒しであり、家族でもある。
動物は、動物なのか、ペットなのか、家族なのか。人間以外の生き物は他者たりうるのか。現代社会において他者と共に在ること。人と生物の種を超えた、動物/ペット(コンパ二オン)/家族の関係をとらえなおす。

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目次

〈動物のこころのなか〉
動物は、自分のことをどう思っているか……比較認知科学から考える
藤田和生(京都大学大学院文学研究科心理学研究室教授)
「比較認知科学」の最新の研究成果から、動物たちのこころは、これまで考えられていた以上に複雑で豊かなものだということがわかってきた。動物と人間を分ける垣根は、今やどんどん低くなっているのである。動物たちは、決して本能のおもむくままに、生きているわけではない。どの動物も、自身の生き方にマッチしたかたちで情報を処理し、考え、行動を調節して、環境に適応しているのである。
動物心理学の最新の知見をたよりに、動物のこころのありよう、さらには、動物に自己意識はあるか、という哲学的難題に踏み込んでいく。

〈part of the animalである私〉
動物という贈り物……感謝・愛着・リスペクト
山口未花子(岐阜大学地域科学部助教)
人と動物の関係について明らかにするために、動物生態学や生態人類学、文化人類学を学んだ山口未花子氏は、単身カナダのインディアンの古老を訪ね弟子入りする。700kgもあるヘラジカを仕留め、その巨体を解体し、肉を処理し、食し、皮をなめすといった、猟師の修行を積んでいく。
カナダの狩猟民カスカと共に暮らしながら、動物とのあるべき接し方に思いをめぐらせ、また、食べる/食べられるというかかわりのなかで、人間と動物の濃密な、しかし越えがたい関係性を見出していく。感謝し、リスペクトしながら動物を食べるということ。人間と動物のつながりの一切はここに集約される。

〈動物の観念史〉
動物哲学から動物の哲学へ……動物霊魂の周辺
金森修 (東京大学大学院教育学研究科教授)
金森氏は、著書『動物に魂はあるか』で、古代ギリシア・ローマ時代から20世紀のハイデガー、デリダに至るまで、哲学者たちによる動物論の系譜を紐解きながら、丹念に跡付けていく。
人間未満の生きもの、動物のことを考えることは、結局人間そのものを考えることにつながるという。動物へのまなざしの精緻な読解は、やがて人間それ自体への深い洞察へ向かう。

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