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ダム建設と地域住民補償

文献にみる水没者との交渉誌

ダム建設と地域住民補償
著者 古賀 邦雄
ジャンル 文化とまちづくり叢書
社会
出版年月日 2021/06/23
ISBN 9784880655062
判型・ページ数 A5並製・320ページ
定価 3,520円(本体3,200円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

大規模公共事業は住民たちに何をもたらしたのか…。
用地補償の事例から見た、ダム用地取得の裏表。

公共事業の中でも特に大規模なダム建設。
治水のために、河川にダム、堰を造り、水害の減災を図り、さらに利水として、建設した導水路によって、水道用水、農業用水、工業用水、電力用水の供給などの役割を担っている。

しかしダム建設にはまず用地の確保が必要である。水没する用地の取得、水没者の家屋、立竹木などの補償。用地交渉説明会では、故郷を喪失する住民からダム反対の鋭い意見が出され、何年も進捗しないことも多い。やがて何度も説明を重ねダム建設の役割が理解されると同時に、補償交渉も進展し始める。

本書は33年にわたり、ダム用地交渉の最前線で業務を担当した著者が、自身の経験と河川・湖沼に関する膨大な文献から、用地補償業務の事例と湖底に沈んだ地域住民の心を貴重な図版・資料を交えながら描く。

【著者】古賀邦雄(こが・くにお)
1944年福岡県大牟田市生まれ。西南学院大学卒業後、水資源開発公団(現・水資源機構)入社。徳山ダム、大山ダム、福岡導水などの建設に関わり、用地補償業務に従事。33 年間にわたり水・河川・湖沼に関する文献を収集。2001年退官。2008年収集した河川書で久留米市に古賀河川図書館を開設。日本ダム協会、日本河川協会、ミツカン水の文化センター、筑後川・矢部川・嘉瀬川流域史研究会、ふくおかの川と水の会に所属。2020 年河川書1万2千冊を久留米大学御井図書館へ寄贈、同大では「古賀邦雄河川文庫」を開設した。
*プロフィールは本書刊行時のものです。
*本書は2004〜2014年「用地ジャーナル」(大成出版社)に連載された「文献にみる補償の精神」を再編集し単行本化したものです。

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目次

掲載ダムマップ
はじめに

【北海道・東北】
1.本件収用裁決が違法であることを宣言することとする
(二風谷ダム・北海道)
2.けやぐにならねば、津軽では仕事が出来ね
(早瀬野ダム・青森県)
3.地域を守り、古里を守ろうと、みんな必死だったのです
(御所ダム・岩手県)
4.全員がパンフレットを天井目がけて放り投げ、総退場してしまった
(七ヶ宿ダム・宮城県)
5.お嫁さんを迎えた気持ちで市としても万全を図りたい
(寒河江ダム・山形県)
6.反対派賛成派とふ色分けを吾は好まずただに説くべき
(只見川のダム群・只見ダム・奥只見ダム・福島県)
7.あんた方は絶対反対と云われるが、われわれは絶対つくらにゃいかん
(田子倉ダム・福島県)
8.地権者の方々が共に生活していたので汽車の音がする所を探してほしい
(大川ダム・福島県)

【関東】
9.三十二年間の経済的、精神的な負担に対しての償いを形として表してほしい
(緒川ダム・茨城県)
10.「西の松原・下筌」「東の薗原」と言われるほどに
(薗原ダム・群馬県)
11.明日、荒川村へ引っ越すのでこの風景は今日までです
(滝沢ダム・埼玉県)
12.花とお酒を供えて、般若心経を唱え心からお詫びをいたしました
(用地担当者の手記・埼玉県)
13.帝都の御用水の爲め
(小河内ダム・東京都)
14.戦争という大義
(相模ダム・神奈川県)
15.あんた100回位通いなさいよ そのうち何とかなるでしょう
(城山ダム・神奈川県)

【中部】
16.われわれ土木屋は民衆のふところに飛び込むことができなければならない
(大河津分水・新潟県)
17.尊きみはらしに捧ぐ
(黒四ダム・富山県)
18.七十五万人県民のためとして調印を承諾されたのである
(笹生川ダム・雲川ダム・福井県)
29.400年の歴史があったんだから
(荒川ダム・山梨県)
20.木の見返りに米をあたえる
(味噌川ダム・長野県)
21.誰も大事な大事な故郷がなくなることを喜ぶ者はいない
(徳山ダム・岐阜県)
22.貴殿方が現在以上に幸福と考える方策を我社は責任を以て樹立し
(御母衣ダム・岐阜県)
23.生きている人間を相手に一片のペーパープラン通りにいくか
(佐久間ダム・静岡県・愛知県)
24.ないから高いんだよ、君達はその土地を開いてくれるから協力するんだよ
(牧尾ダム・愛知用水・岐阜県・愛知県)
25.鳳来寺山にため池をつくり渥美半島の先まで水を引けばいい
(豊川用水・愛知県)

【近畿・中国・四国】
26.湖を慈しみ、やさしさで見守って行こうとする情が表れている
(琵琶湖開発・滋賀県)
27.どこまでも被害者は被害者でないようにしたい
(大野ダム・京都府)
28.仁義礼智を尽くして礼をもって行動し、強行措置は絶対にやりません
(尾原ダム・志津見ダム・斐伊川放水路・島根県)
29.ダム阻止一点張りでは町の発展はない
(苫田ダム・岡山県)
30.来てくれと頼んだ覚えはない
(温井ダム・広島県)
31.県の総合開発計画に基づく多目的ダムの建設をあくまで主張して
(土師ダム・広島県)
32.その我々を前にボートとは何ぞ、観光客とは何ぞ
(柳瀬ダム・愛媛県)

【九州・沖縄】
33.私共は、用地知識を積極的に水没者に与えることによって
(寺内ダム・福岡県)
34.ノリ期における新規利水の貯留及び取水は流量一定以下の時は行わない
(筑後大堰・福岡県・佐賀県)
35.故郷は路傍の石さえ母の乳房の匂いがする
(北山ダム・佐賀県)
36.法に叶い、理に叶い、情に叶う
(下筌ダム・松原ダム・熊本県・大分県)
37.だまって下男代わりの仕事に徹し、一言も用地の話はしなかった
(川原ダム・宮崎県)
38.俺たちは土下座し、貴様らだけ椅子にかけるとは何事だ
(高隈ダム・鹿児島県)
39.向こう数年間も沖縄県民のために汗をかこう
(福地ダム・沖縄県)

あとがき 画像提供者一覧

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