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文化力による地域の価値創出  新刊

地域ベースのイノベーション理論と展開

文化力による地域の価値創出
著者 田代 洋久
ジャンル 文化とまちづくり叢書
出版年月日 2022/03/30
ISBN 9784880655246
判型・ページ数 A5並製・280ページ
定価 2,970円(本体2,700円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

地域の価値と魅力を高めるイノベーションとは?

 人口減少社会に突入してからすでに10年を超え、少子高齢化と地域格差が相まって地域の存続の危機が高まっている。一方、政府レベルでの政策は停滞し、自治体は財政的にも制度的にも危機的状況にある。この事態を救うにはこれまでのように地域資源のレガシー(過去の遺産)に頼るのではなく、固有の文化資源の掘り起こし、域外からの資源の導入によって地域の価値と魅力を高めることが必要だ。

 本書は、文化性のある地域資源、地域ベースのアートプロジェクト等による文化創造と政策活用に着目し、文化と地域を結合することで地域のもつ力を “見える化” する。さらに地域ベースのイノベーション理論モデルを構築し、まちづくりの実践事例の長期的な観察をもとに論考を加えている。地域の潜在力とダイナミズムを引き出すための新しい地域マネジメント論である。

著者:田代 洋久(たしろ・ひろひさ)
北九州市立大学法学部政策科学科教授。京都大学工学部卒。大阪市立大学大学院創造都市研究科博士課程修了。博士(創造都市)。大手光学機器メーカー研究開発部門、三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、兵庫県庁、兵庫県立大学を経て現職。専門は都市(地域)政策、地域経済、文化まちづくり政策。ふるさと財団地域再生マネージャー事業推進アドバイザー。日本芸術文化振興会専門委員。著書(共著)に『地域マネジメント戦略』『創造社会の都市と農村』(水曜社)ほかがある。
*プロフィールは本書刊行時のものです。

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目次

はじめに
第1章 変容する地域社会と政策
第1節 人口減少社会の衝撃と地域格差の拡大
第2節 人口を増加させる政策とは何か
第3節 今日の政策課題はいかにしてもたらされたのか
第4節 社会システム改革
第5節 公民協働による課題解決  ガバナンスとパートナーシップ
第6節 地域開発からまちづくりへ  外来型開発/内発的発展
第7節 地域課題の解決に向けたビジネス手法の活用の拡大
(1)社会的経済の台頭とその特質
(2)日本の社会的企業の状況
(3)民間営利企業の社会戦略(CSRとCSV)
第8節 都市再生と地方創生政策

第2章 地域ソーシャル・イノベーション 新しい地域発展モデルの探索
第1節 地域資源を活用したまちづくりの高度化
第2節 地域ベースのイノベーション
(1)なぜ地域ベースのイノベーションが求められるのか
(2)イノベーションの系譜と進化
(3)ソーシャル・イノベーションのアプローチ
第3節 地域ソーシャル・イノベーションモデルの設計
(1)イノベーションによる地域の価値創出
(2)地域ソーシャル・イノベーションの基本概念
(3)3つの基本要素
第4節 地域ソーシャル・イノベーションの構造と形成要因
(1)産業クラスター論におけるイノベーションの形成要因
(2)構造モデルと形成メカニズム
第5節 イノベーションの形成プロセス
(1)知識創造の環境
(2)Rogersのイノベーション普及モデル
(3)イノベーションの受容・資源動員

第3章 地域の持続的発展に挑む
第1節 地域の価値創出とまちづくり
第2節 地域資源の結合による価値創出のメカニズム
第3節 町並み景観と創作活動の組み合わせによる価値創出
第4節 観光まちづくりと地方創生
第5節 文化芸術による地域の価値創出 アートプロジェクトによる地域活性化
第6節 持続的社会の形成に向けたまちづくりの位相変化 ポジショニングマップ分析

第4章 地域の潜在能力を引き出す地産地消運動 秋田県三種町
第1節 JA秋田やまもとによる地産地消運動の展開
第2節 地域ソーシャル・イノベーション構造モデルによる分析
(1)地域課題の共有化
(2)基本要素
(3)形成要因
(4)経済的・社会的効果
第3節 まちづくりの課題と政策的意義
(1)構造モデルより抽出されるまちづくりの課題
(2)政策的意義
〈ポジショニングマップ分析〉

第5章 町並みと調和する創作活動とまちづくり 岡山県真庭市勝山地区
第1節 真庭市勝山地区の概要
(1)第1期:町並み保存地区整備事業(1985~1995年度)
(2)第2期:公民協働によるソフト事業の展開(1996~2003年度)
(3)第3期:文化まちづくりの展開(2004年度~)
第2節 勝山地区のまちづくりの発展過程
(1)まちづくり効果に関する住民意識
(2)のれんのまちづくりと勝山のお雛まつりの普及過程
(3)イノベーション形成プロセスモデルでの検証
第3節 勝山のまちづくりと地域住民の受容
第4節 まちづくりの課題と新しい担い手の台頭
〈ポジショニングマップ分析〉

第6章 文化創造と食と農によるまちづくり 大分県臼杵市
第1節 臼杵市の地域資源とまちづくり
第2節 変革に挑戦する商店街 臼杵市中央通り商店街
第3節 公民協働による文化イベントの創造 うすき竹宵
第4節 女性が主役の新しい文化創造 うすき雛めぐり
第5節 循環型社会形成への挑戦 有機の里づくりから食文化創造都市へ
(1)給食畑の野菜
(2)臼杵市土づくりセンターとほんまもん農産物
(3)有機農業の担い手の確保
(4)映画『100年ごはん』
(5)臼杵ブランド「うすきの地もの」
第6節 臼杵市のまちづくりの起源 風成闘争の経験とまちづくりの課題
〈ポジショニングマップ分析〉

第7章 地方都市におけるアートプロジェクト 温泉地別府と周辺地域
第1節 別府市におけるアートプロジェクトの拡大と発展
(1)温泉地別府の繁栄と衰退
(2)NPO法人BEPPU PROJECTの設立と展開
(3)中心市街地でのアートプロジェクトの展開 別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」「ベップ・アート・マンス」
(4)アートプロジェクトの方向性の転換――in Beppu(別府市)
第2節 別府市周辺地域での展開
(1)半島でのアートプロジェクト――国東半島芸術祭(国東市、豊後高田市)
(2)県庁所在地での展開――おおいたトイレンナーレ2015(大分市)
第3節 県レベルでのプロジェクト
 国民文化祭・おおいた2018、 全国障害者芸術・文化祭おおいた大会
〈ポジショニングマップ分析〉

第8章 大規模アートプロジェクトと地域活性化 直島と小豆島
第1節 直島町における民間企業による文化事業とまちづくり
(1)直島の地域特性
(2)ベネッセによる文化事業の展開
第2節 瀬戸内国際芸術祭による地域活性化
第3節 文化事業による地域社会の変化 直島町
(1)押し寄せる来訪者
(2)景観まちづくりの展開
第4節 小豆島町における芸術祭を契機とした地域政策の展開
第5節 直島と小豆島の地域活性化アプローチの比較
〈ポジショニングマップ分析〉

第9章 文化まちづくり政策による地域の価値創出
第1節 文化観光政策の興隆と多元性(文化まちづくり政策の展開)
(1)創造性を活かした都市再生
(2)文化芸術基本法の制定と文化芸術基本計画の策定
(3)大分県の文化創造政策
第2節 地域ベースのアートプロジェクトと政策
(1)アートプロジェクトの政策活用
(2)アートプロジェクト事例の政策目的と期待効果
(3)アートプロジェクトの来場者像
第3節 地域ベースのアートプロジェクトによる政策効果の検証
(1)観光
(2)人口
(3)地域経済
第4節 アートプロジェクトと地域ベースのイノベーション 創作活動による地域の価値創出メカニズム
第5節 広域型文化まちづくり政策の構想 文化創造集積地域の形成
(1)地域ベースのアートプロジェクトの拡がりと政策的意義
(2)文化創造集積地域の可能性
第6節 アートプロジェクトの課題と今後の文化まちづくり政策の方向性

終 章
第1節 ポジショニングマップ分析に基づく考察
第2節 本書で論じたかったこと
(1)NPMの浸透による公共政策の変容
(2)地域資源を活用した観光まちづくり
(3)地域の価値創出とイノベーション
(4)文化的資源と文化創造を基軸とする文化まちづくり政策
(5)公共政策分野のイノベーション
(6)まちづくりの課題と新たな危機への対応
(7)残された課題と今後求められる地域マネジメントの素描
おわりに
参考文献
索引

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