フィリピンのアートと国際文化交流
国際文化交流の現場から。日系移民らの現在や、日本のポップカルチャーとの交流など新時代の関係性を模索する
著者 | 鈴木 勉 著 |
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ジャンル | 文化とまちづくり叢書 |
出版年月日 | 2012/05/05 |
ISBN | 9784880652849 |
判型・ページ数 | A5並製・240ページ |
定価 | 3,080円(本体2,800円+税) |
在庫 | 在庫あり |
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内容説明
ネガティブな社会情勢とは裏腹な芸術の宝庫、豊穣の島々・フィリピンからはじまる国際交流。
フィリピンは一般的にネガティブな印象で語られることが多い。不安定な社会や貧困。政治腐敗と治安の悪さ。日本映画で描かれる暗黒世界マニラ……。しかし現実は演劇、映画、社会派アート、フェミニズムアートからゲイカルチャーなど都市部、地方を含め様々な活気のあるパフォーミングアートの宝庫でもある。
本書は第1部でフィリピンの活気に満ちた現代文化とアートを中心に、この国の多様な姿を紹介し、第2部では国際文化交流の現場から、日系移民ら現在とNGOの活動、国際共同制作による現代演劇や日本のポップカルチャーとの新たな交流など、新時代の日本とフィリピンの関係性を模索する。
【著者】鈴木 勉(すずき・べん)
1963年生まれ。国際交流基金日本語事業グループJF講座チーム長。86年国際交流基金に入社。バンコック日本文化センター、アジアセンター知的交流 課、ジャカルタ日本文化センター、2005年より5年間マニラ日本文化センター所長を経て現職。日本と東南アジアとの文化交流や現地文化財保存プロジェク トなど担当。
*プロフィールは本書刊行時のものです。
目次
第一部 フィリピンアート・ガイド編
第1章 パフォーミングアートの宝庫
ハロハロなフィリピン演劇/パフォーミングアートを支える国とエリート/パフォーミングアートを支えるコミュニティー/地方で活躍する劇団/コンテンポラリーダンスの挑戦/世界への挑戦と創造性の流出/インデペンデントの祭典/フィリピンでオペラ?
第2章 メインストリームを行く社会派アート
激しいフィリピン美術との出会い/早熟なアカデミズムと社会派アート/糞を描くアーティスト/戦うパフォーマンス・アーティスト/抵抗の精神を受け継ぐコミュニティアートの前衛たち
第3章 フィリピン映画の過去・現在・未来
デジタルシネマの祭典シネマラヤの興隆/フィリピン映画の凋落と新たな挑戦/豊かな物語の宝庫/フィリピン・インデペンデント・シネマの歴史/新しいヒーローの誕生/現代版映画の王国
第4章 文学・ナショナリズム・デモクラシー
憂国の作家/フィリピン・ペンクラブ五十年と次世代の作家へのメッセージ/『我が心のアメリカ』とアメリカ崇拝からの決別/反骨精神の故郷/デモクラシーの祭典とリセッションの時代
第5章 フィエスタ・キリスト教・フェミニズム・ゲイカルチャー
フィエスタの国/キリスト教と聖なる像/フェミニズムとアート/アジア各地に伝わるジェンダーを超えた存在/ゲイカルチャーと表現のフロンティア
第6章 豊かな地方文化 ーコルディレラからミンダナオー
バギオのアーティスト・コミュニティー/イフガオの伝統文化を守る試み/平和を愛する民と先住民の権利を守る闘い/ミンダナオの豊かな文化とテロリズム/“テロリストの島”と「花より男子」/ビデオカメラとペンを手にしたスルタンの末裔/海から来た民族の記憶/戦争のトラウマとアートの役割
第二部 国際文化交流・実践編
第7章 文化交流の領分ー戦争の記憶への眼差しー
太平洋戦争激戦地でのよさこうソーラン/戦争の記憶/海を渡らなかったキュビズム/「赤い家」の記憶
第8章 交流の基層となるもの ー日比をつなぐ二つの血ー
バギオの“アボン(家)”/ダバオの日系移民/美しい多島海の島々と日本人/黒潮でつながるフィリピンと沖縄/日本を夢見る日本人の子供たち/旧日系人と新日系人
第9章 補助線を引く役割 ーNGO交流の現場ー
NGO大国/ゴミに託すメッセージ/カタリスト(触媒)としての国際交流/コルディレラを舞台にした日比合作映画/平和構築をモスレム女性たちの手で/現代のキリストとの間に引かれた一本の補助線
第10章 交流から創造へ ー国際共同制作の試みー
国際共同製作の目指すもの/伝統へのチャレンジ/悩める現代演劇の共同製作
第11章 同時代性の力ーポップカルチャー交流ー
世界の共通言語となった日本のポップカルチャー/フィリピン発で世界のMANGAに/ポピュラー音楽を通した交流/“非常事態宣言”下のポップスコンサート/ジャパニーズフード紹介の新たな試み/日本を目指すフィリピンのファッションデザイナーたち
第12章 新たな日比関係を求めて
ジャパゆきを超えて/日比経済連携協定の行方/将来の鍵を握る日本語教育/日本に向けられた優しい眼差し/「災後」の日本・眼差しへの返答
あとがき