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文化財の価値を評価する

景観・観光・まちづくり

文化財の価値を評価する

受益者と便益の規模を推測し、文化財保護のコストを算出することが観光資源のさらなる価値を生み出し、地域の発展つながる

著者 垣内 恵美子 編著
岩本 博幸
氏家清和
奥山 忠裕
児玉 剛史
ジャンル 文化とまちづくり叢書
出版年月日 2011/10/28
ISBN 9784880652696
判型・ページ数 並製208ページ
定価 3,080円(本体2,800円+税)
在庫 品切れ・重版未定
 

内容説明

文化財とは、それぞれの時代に創造された新たな価値が長い時を経て社会的な認知を受け、地域や社会にとって貴重な資産となったものである。また文化財には、歴史的・文化的価値などの公益的側面があり、その価値を維持し高めていくために継続的に公的な支援が必要である。しかし限りある財源から文化財の価値を維持するためには、文化財が持つ便益の種類や受益者を特定し、維持、保存することによって得られる便益を推測しながら、適切で持続的な支援のシステムの構築が不可欠である。そしてそのためには文化財の価値の評価手法が重要となる。

本書では第一の目的として、文化財の市場に現れない価値をはかるために、文化財保護の受益者とその便益の規模をできるだけ客観的に定量的に推定してゆく。
第二の目的として、地域作りと文化財保護の新たな関係性を焦点にあてる。町並み、歴史的建造物、伝統工芸品、舞台芸術など、多様な文化財を単に支援を受ける一方的なものととらえず、地域づくりに活用するための前提として人々が何を求めているのか実態に迫る。
第三の目的として、文化財のより持続的な保護のあり方と市場からの資源の調達の可能性について考察し、できれば制度論につなげてゆこうというものである。

本書は8年をかけ調査・検討を試み、事例研究をまとめたものであり、文化財保護に関わる実務者、研究者、自治体関係者必読の1冊です。

【編著】垣内 恵美子(かきうち・えみこ)
政策研究大学院大学 文化政策プログラム教授、プログラム・ディレクター。
政策研究大学院大学教授。東京大学法学士、シドニー大学経済学修士、東京大学工学博士。文部省入省後、文化庁文化政策室長、一橋大学教授などを経て、2004年より現職。パリ大学、トリノILOセンターなどで教鞭を執るほか、国土審議会政策部会委員など。著書に『文化財政策概論』(共著、東海大学出版会)、『文化的景観を評価する』(水曜社)、『フランスの文化政策(監訳)』など。2002年度日本都市計画学会論文奨励賞受賞、2009年度計画行政学会論文賞受賞。

【著者】
岩本 博幸(いわもと・ひろゆき)
東京農業大学准教授。北海道大学大学院修了。農学博士。政策研究大学院大学助手を経て現職。専門は、農業経済学、環境経済学。主たる研究分野は、政策評価手法の開発。

氏家 清和(うじいえ・きよかず)
筑波大学助教。筑波大学大学院修了。農学博士。政策研究大学院大学助手、東京大学助教を経て現職。専門は、農業経済学。主たる研究分野は、消費行動分析。

奥山 忠裕(おくやま・ただひろ)
長崎県立大学講師。東北大学大学院修了。経済学博士。政策研究大学院大学研究助手、運輸政策研究所研究員を経て現職。専門は、環境経済学、公共政策。主たる研究分野は、政策評価。

児玉 剛史(こだま・よしふみ)
宇都宮大学准教授。京都大学大学院修了。農学博士。専門は、農業経済学。主たる研究分野は、食料経済分析。
*プロフィールは本書刊行時のものです。

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目次

はじめに

第1章 文化財保護と地域づくり
第1節 地域における文化資源
    1.地域の文化資源の保存と活用
    2. 文化財保護と地域づくり
    3. 文化財保護法の制度と枠組み
第2節 文化財保護とまちづくり
    1.まちづくり・観光と文化財
    2.文化的な景観
第3節 新たな動き〜地域づくりの観点から
    1.文化財と地域の接近
    2. 多様なステークホルダー
    3. 文化財の価値〜便益評価

第2章 富山県五箇山CVM調査から
第1節 世界遺産富山県五箇山合掌造り集落
    1.富山県五箇山合掌造り集落
    2. 史跡指定と世界遺産登録
    3.集落の維持と伝承〜村の取り組み

第2節 文化財の便益
    1.CVM調査   
    2. どのような便益を図るのか
第3節 世界遺産の社会的便益(WTP)の推計
    1.世界遺産の便益
    2.合掌造り集落の価値に関する考察
    3.世界遺産集落の維持に向けて
 
第3章 広島県宮島
第1節 世界遺産の島:広島県宮島
    1.宮島の概況
    2.嚴島神社と世界遺産登録
    3. 世界遺産を活かした観光施策
第2節 文化観光の実態
    1.文化財のレクリエーション価値
    2.宮島観光客の消費需要
    3.観光消費の特性
第3節 レクリエーション活動の便益評価
    1.レクリエーション活動評価の考え方
    2.社会的便益の評価(CVM)
    3.レクリエーションの便益評価(TCM)

第4章 岐阜県高山市の文化的景観
第1節 岐阜県高山市の重要伝統的建造物群保存地区
    1.高山市の歴史と現状
    2.高山市重要伝統的建造物群保存地区の概要
    3.高山市における保存の仕組み
第2節 文化観光の実態
    1.文化と地域、そして観光
    2.観光実態
    3.観光消費の特性
第3節 文化観光の推進と地域づくりの共存に向けて
    1.観光の推進と市民意識
    2.まちなみの価値と観光の調和
    3.文化観光と地域づくりの共存に向けて

第5章 滋賀県長浜市コンジョイント分析から
第1節 滋賀県長浜市の挑戦
    1.長浜市〜海の真珠のようなまち
    2.中心市街地の衰退と都市再生プロジェクト
第2節 黒壁プロジェクト
    1.黒壁プロジェクトの始まり
    2.(株)黒壁の活動〜現状と課題
    3.都市型観光の進展
第3節 文化都市の魅力とは〜コンジョイント分析
    1.コンジョイント分析
    2.観光客の選好と都市の魅力
    3.都市型文化観光の可能性

第6章 総括
第1節 文化財の価値
    1.文化財の価値
    2.文化財保護の新たな視点
    3.文化財の価値評価:必要性と限界
第2節 地域コミュニティへのインパクト
    1.文化財の本源的価値:富山県五箇山合掌造り集落
    2.文化財の誘客力:広島県宮島
    3.文化財保護と観光の調和:岐阜県高山市
    4.文化観光推進の方向性:滋賀県長浜市
第3節 新たな支援システムと観光
    1.文化財の社会的便益
    2社会的に適切な支援と政治的に可能な支援の乖離
    3.観光との両立

事項索引

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