文化的景観を評価する
世界遺産 富山県五箇山合掌造り集落の事例
文化的資産を定量的、客観的に評価しその価値を明らかにする。観光資源を有効活用するために社会学的及び統計学的に解説する
著者 | 垣内 恵美子 著 |
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ジャンル | 文化とまちづくり叢書 |
出版年月日 | 2012/11/11 |
ISBN | 9784880653037 |
判型・ページ数 | B5並製 ・320ページ |
定価 | 4,620円(本体4,200円+税) |
在庫 | 在庫あり |
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内容説明
文化とは何か。社会にとって文化とはどのような価値があるのか。
そしてその価値を維持するためにはどのようにしたらよいのか。
文化資産の価値については定量的あるいは客観的評価になじまないとされ、 また適切な手法がなかったこともあり、十分な実証研究はなされてこなかった。
本書は世界遺産富山県五箇山合掌造り集落をモデルに、費用便益分析手法の一つである「仮想評価法(Contingent ValuationMethod =CVM)」を用いて公共経済学、 財政学、社会学的及び統計学的アプローチで、 実証的かつ客観的に文化資本の価値を明らかにする。豊富な図表とCVS調査マニュアルは地域の文化財保全を担当する実務家や研究者必読である。
【著者】垣内 恵美子(かきうち・えみこ)
政策研究大学院大学 文化政策プログラム教授、プログラム・ディレクター。 政策研究大学院大学教授。東京大学法学士、シドニー大学経済学修士、東京大学工学博士。文部省入省後、文化庁文化政策室長、一橋大学教授などを経て、 2004年より現職。パリ大学、トリノILOセンターなどで教鞭を執るほか、国土審議会政策部会委員など。著書に『文化財政策概論』(共著、東海大学出版 会)、『文化的景観を評価する』、『フランスの文化政策(監訳)』、『文化財の価値を評価する』(いずれも水曜社)など。2002年度日本都市計画学会論 文奨励賞受賞、2009年度計画行政学会論文賞受賞。
*プロフィールは本書刊行時のものです。
目次
序 章 文化的景観の評価を試みるー研究の背景と目的
序.1. はじめに
序.1.1. 問題意識
序.1.2. 現状認識
序.1.3. 研究の目的及び方法
序.2. 本書の構成
序.3. 既往研究の整理
序.4. 用語の定義ー「文化」
序4.1. 国際的な「文化」の定義
序4.2. 我が国における「文化」の語源と一般的なイメージ
序4.3. 公共政策の対象分野としての「文化」
序4.4. 文化政策
第1部 文化政策の構造的枠組み及び文化資本の外部性に関する理論的考察
第1章 文化政策の変遷と構造的枠組み
1.1. 文化政策の変遷
1.1.1. 文化政策の変遷(戦前)
1.1.2. 文化政策の変遷(戦後第1期:終戦〜1950年代末)
1.1.3. 文化政策の変遷(戦後第2期:1960年代〜1970年代前半)
1.1.4. 文化政策の変遷(戦後第3期:1970年代後半〜1980年代末)
1.1.5. 文化政策の変遷(戦後第4期:1990年代以降)
1.2. 文化政策の背景と構造的枠組み
1.2.1. 公共政策としての文化政策ーその背景
1.2.2. 文化概念の拡大と方向性
1.2.3. 構造的枠組み(公的機関)
1.3. 文化政策の課題
1.3.1. 地域に密着した文化政策と主体の多様化
1.3.2. 文化芸術振興基本法
1.3.3. 構造改革の課題ー政策評価
第2章 地域における文化政策の発展
2.1. 地域における文化政策
2.1.1. 地域における文化政策の広がり
2.1.2. 文化政策の組織、決定過程
2.1.3. 地域文化振興計画等に見る文化政策
2.2. 国際的な動向ー都市政策との融合
2.2.1. ヨーロッパのケース
2.2.2. 米国のケース
2.2.3. 方向性と課題
2.3. 公共政策としての文化政策
2.3.1. 公共財性と外部効果
2.3.2. 文化的価値
2.3.3. 文化資本の概念
第3章 文化資本と地域の持続可能性
3.1. 文化資本の価値
3.1.1. 文化資本の社会学的価値
3.1.2. 文化資本の経済学的価値
3.1.3. 文化資本の非市場価値
3.2. 文化資本の評価方法
3.2.1. 社会学的アプローチによる文化資本の評価
3.2.2. 経済学的アプローチによる文化資本の評価
3.2.3. 公共財の評価方法
3.3. CVM
3.3.1. CVM の設計
3.3.2. 既往研究のレビュー(日本におけるCVM 研究)
3.3.3. 諸外国における CVM 研究
3.3.4. 本研究における CVM 設計
第2部 具体的事例の実証的研究ー世界遺産富山県五箇山合掌造り集落の事例
第4章 五箇山合掌造り集落を巡る実態分析と課題抽出
4.1. 富山県五箇山(平村、上平村)の現状
4.1.1. 富山県五箇山の歴史的背景
4.1.2. 集落の概要
4.1.3. 保護の現状ー管理、保存、修理、防災事業ー
4.2. 世界遺産条約
4.2.1. 世界遺産条約の概要
4.2.2. 世界遺産の概念
4.2.3. 五箇山合掌造り集落の世界遺産リストへの登録
4.3. 将来ビジョンと支援システム
4.3.1. 五箇山世界遺産維持の課題
4.3.2. 将来ビジョン
4.3.3. 新しい互助のシステム
第5章 受益者の推定、効用の分析・規模の確定(観光客に対する CVM 調査)
5.1. 観光客調査のフレームワーク
5.1.1. 仮想市場の設計
5.1.2. 調査実施概要
5.2. 単純集計
5.2.1. 観光客集団の特性
5.2.2. 合掌造り集落に対する意識
5.2.3. 支援方策
5.3. 調査結果の分析
5.3.1. 付値関数の推定
5.3.2. TWTP の推計
5.3.3. 利用者(観光客)の便益の総括
第6章 受益者の推定、効用の分析・規模の確定( 全国 CVM 調査)
6.1. 全国調査のフレームワーク
6.1.1. 仮想市場の設計
6.1.2. 調査実施概要
6.2. 単純集計
6.2.1. 全国調査対象集団の特性
6.2.2. 合掌造り集落に対する意識
6.2.3. 支援方策
6.3. 調査結果の分析
6.3.1. 付値関数の推定
6.3.2. TWTP の推計
6.3.3. 非利用者(全国民)の便益の総括
第3部 総合的考察と理論展開
第7章 文化政策の課題ー政策評価
7.1. 文化遺産の総合的評価
7.1.1. 文化遺産の評価
7.1.2. 文化遺産の公共財性
7.1.3. 文化政策の評価
7.2. 政策評価の可能性
7.2.1. 政策評価の経緯と展開
7.2.2. 評価分析方法
7.3. 文化政策へのインプリケーションー今後の展開
7.3.1. 費用便益効果ー比較考量の試み
7.3.2. バッファゾーン(緩衝地帯)施策の評価の試み
7.3.3. 相互扶助の可能性ー管理主体及び方法の考察
7.4. 総括
7.4.1. 既往研究の中での本研究の位置付け
7.4.2. 問題点と将来への課題
7.4.3. 文化政策計画への取り組み
資料編
別添資料
2-1 文化振興計画等詳細資料
3-1 NOAAガイドライン
3-2 CVM 既往研究一覧
3-3 諸外国の CVM 研究事例
3-4 CVM バイアス
4-1 伝統的建造物群保存地区制度の仕組み
4-2 文化遺産物件資料ー相倉集落
4-3 文化遺産物件資料ー菅沼集落
4-4 文化遺産物件資料ー緩衝地帯
4-5 平村建造物群保存地区保存条例
4-6 保存地区及び緩衝地帯内の法的規制一覧
4-7 世界遺産の種別と登録基準
5-1 パイロット・サーベイ調査票
5-2 パイロッ ト・サーベイ調査結果単純集計表
5-3 五箇山調査依頼状
5-4 富山県五箇山合掌造りについてのアンケート調査8.27案
5-5 スライド focus group interview
5-6 世田谷美術館ボランティアに対する調査結果単純集計表
5-7 富山県五箇山相倉合掌造り集落についてのアンケート調査票
5-8 富山県五箇山相倉合掌造り集落についてのアンケート調査のお願い
5-9 富山県五箇山菅沼合掌造り集落についてのアンケート調査票
5-10 富山県五箇山菅沼合掌造り集落についてのアンケート調査のお願い
5-11 五箇山合掌造り集落CVM調査 調査マニュアル
5-12 自由記述(相倉集落)
5-13 自由記述(菅沼集落)
6-1 富山県五箇山合掌造り集落についてのアンケート調査のお願い
6-2 富山県五箇山合掌造り集落についてのアンケート調査票
6-3 自由記述(全国調査)
7-1 政策評価の技術方法
7-2 史跡等保存整備費推移
参考文献リスト