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102歳の平穏死

自宅で看取るということ

102歳の平穏死

骨折による入院をきっかけに考える、自宅での看取り。高齢者のために必要な医療と、自宅で看取ることの幸せについて

著者 井上 貴美子
ジャンル 社会
出版年月日 2015/06/23
ISBN 9784880653624
判型・ページ数 並製176ページ
定価 1,540円(本体1,400円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

100歳の父と義理の娘。
骨折による入院をきっかけに、徐々に険悪になるふたりの関係。
しかし延命治療の中止と、自宅での看取りを決めたときから、再びふたりに「なかよし時間」が訪れる。
本書は高齢者のために必要な医療とは、そして自宅で看取ることの幸せについて語る体験談です。

いよいよ退院の日がきた。
私たちは父の病室を訪れた。
「お父さん、今日、退院しますよ」

父はその頃はもう生気がなくやつれた感じであったが、今日はどうであろうかと父の顔を覗き込むと、その目は、今までになく輝いていた。
(中略)

家に帰って落ち着いたところで、私は、聞いた。 
「お父さん、家に帰ってきましたよ。どうですか」
父はひと言答えた。 
「幸せだ」
(本書より)

【著者】井上 貴美子(いのうえ・きみこ)
1953年神戸市生まれ。津田塾大学学芸学部・東京大学文学部卒業。在学中に学習塾を開き6年間経営。現在は東京の郊外で夫とふたり暮らしの専業主婦を営 む。家で取れた野菜で得意の料理を作るのが楽しみ。もっとも好きなことは読書で、ノンフィクション作品を多く読み、人体の不思議や生と死について深く考えるようになる。義父の入退院と介護、葬儀までの体験を通じて、自宅での看取りに大きな価値を見出し、本書の執筆に至る。
*プロフィールは本書刊行時のものです。

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目次

はじめに

第1章 100歳を超えても元気だった父の入院から転院まで
野菜作りに忙しい父/お墓の掃除まで休みなくこなす/記憶力が衰え出して……/精神的に衰えない父/「貴美子さん、論理と理論はどう違うの?」/やることがないとゴロゴロしている冬の日/骨折から始まった最期への道のり/誤嚥性肺炎を起こして/手にはミトン、腰には帯でベッドにくくりつけられて/「これをはずしてくれ」/切ない迷路に入り込んでしまったような日々/口から食べられなくなることが人生の分岐点/転院をすすめられて/「帰ってくれ。あなたの顔を見たくない」/何のための毎日なのか……/『「平穏死」のすすめ』を読む』/中心静脈栄養の中心の決断/父と同室の入院患者のこと/退院を前にして

第2章 医療病棟での穏やかな父と、延命をやめる決断
医療病棟に転院/インターネットで病院探し/ミトンをはずされた穏やかになった父/土曜日にかかってきた医師からの電話/医療療養病棟の人々/「痛くも、かゆくもありませんよ」/たしかにある、外からではわからない世界/看護部長さんがすすめる自宅での看取り/「痛い。痛い。やめてください」/「啓治は元気か。明子は元気か」/点滴の中止を決断/「点滴をやめると、どうなりますか」/決断には心の手続きが必要なのか/意識不明になる前にやるべきことは/「お父さんを家で看てあげてください」/ニコニコと見つめ合う/「仲よし時間」って何だろう/父と私に訪れた「仲よし時間」

第3章 自宅での看取りをすすめられて、心温まる退院へ
自宅での看取りを決心させた言葉/主治医もおらず介護保険も申請していない/介護事務所を訪れて/「いのちが心配だ」/「退院までもつかなあ」と心配する夫/102歳まで生きてセレブになった父

第4章 家に帰ってきた父と、介護体制の中での平穏死
「幸せだ」/あっという間に搬入された電動ベッド/「もう、点滴はいいと思うのですが……」/いよいよ始まった自宅での看取りの日々/平穏死の本を信じて良かった/「ひょっとしたら今日か明日かもしれません」/元の大きさに戻っていた父の目/痛みも苦しみもなく穏やかに息を引き取る/布団の上で安らかに眠る父

第5章 美しい祭壇での葬儀と、自宅での看取りについて
葬儀会社を選ぶまで/何かと忙しい葬儀の準備/祭壇だけはいいものをという思い/101歳の誕生祝いに101本もの灯がついたろうそくの写真/「まるで天国のお花畑みたい」/やっぱりセレブになれたのよ/「最期は自宅がいちばんです」/最期だけでも家で看取れるならば/「今まで見たなかでいちばん美しい祭壇」/100点満点で点数をつける葬儀のアンケート

第6章 父との3ヶ月半を振り返ってみて
濃厚な人生を考えさせられる日々/3カ月半はお別れをするのにほど良い期間/子どもたちの「元気」にこだわった理由/死ぬときに現れる計り知れない不思議なこと/息を「引き取る」ものとは

あとがき

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